2018年5月1日火曜日

男性用ピル!?


精子の運動率を可逆的に抑制する成分の、マウスでの研究結果が発表されました。

Inhibition of sperm motility in male macaques with EP055, a potential non-hormonal male contraceptive



これが薬として実用化すれば、
『男性用ピル』的なものになります。

可逆的に抑制、というところがポイントで、
可逆的に、というのは、ちゃんと戻る、という意味で、

薬を飲んでいる間だけ精子の運動率が下がることで避妊効果があり、

薬を飲むのをやめれば、また精子の運動率は戻る、

ということです。

ヒトで使える薬になるかどうかまだ分かりませんが、
実際に『男性用ピル』が実用化したとしても、

女性は女性で、
ピルには避妊効果以外にも女性にとってありがたい効果がたくさんあるので、
必要な方にはおすすめです。
特に、生理痛がひどい人や、生理の量が多くて困っている人は、
ピルで生活の質がものすごく改善することもあるので、
ぜひ一度産婦人科へ相談しに行ってみてください!

でも、男性が自分で避妊できる、というのはいいコンセプトです。
安全な薬として実用化するといいですねー。

『命の母』は更年期症状に効くのか!?

更年期症状かも、、といって受診される患者さんで、

「『命の母』をのんでみたんですけど、、」

とおっしゃられる方、意外と少なくありません。

『命の母』とはなんなのか??

医者は市販薬について学ぶ機会はないので、
お恥ずかしながら、うなぎいぬは『命の母』のことはいまいちよく分かっていませんでした。

CMは有名ですし、
なんとなく、体によいサプリ的なもの、くらいに思ってました。

でも患者さんが飲んでいるものがどういうものなのかはちゃんと把握しておきたいですし、
実際どういうものなのか、本当に更年期に効くのか、
産婦人科的視点で調べてみました!

■『命の母』の歴史は100年以上

『命の母』は、販売しているのは小林製薬ですが、
製造しているのは『笹岡薬品』という会社です。

その創業者の笹岡省三が、体の弱い母を助けようと研究を重ねて、
『命の母』を完成させたのが1903年(明治36年)。

息子をもつ母としては、涙ちょちょぎれる話です。。

というわけで、実に100年以上の歴史です。

■『命の母』の気になる成分は!?

気になるのは成分です。
成分が分かれば効くかどうか一目瞭然のはず。

と思ってしらべると、小林製薬のHPにものすごく分かりやすい図がありました。

命の母に含まれる生薬の図

こちら、更年期症状によく処方する漢方薬との成分の比較です。
よく処方する3種類の漢方薬と、かなり成分がかぶっているのです。
しかも、いわゆる処方薬の漢方薬よりも多くの生薬が配合されていて、
特にニンジンとか入っているから体調よくなること間違いなしです。
さらにビタミン系も配合されており、かなりレベル高いです。。

■『命の母ホワイト』というのがあるらしい!?

今回調べてみてはじめてわかったのですが、
いわゆる『命の母』は『命の母A』というもので、
(なぜAがつくのかは、うなぎいぬ調査では結局分かりませんでした、、すごく気になる。。)

もう1種類、『命の母ホワイト』というのがあるのだそうです。
こちらは、まだ生理がある女性を対象にしたもので、
生理不順やPMS(月経前症候群)に効果があるそう。

成分をみると、確かに、
上記症状によく処方する『当帰芍薬散』という漢方薬の成分をすべて網羅していて、
さらに+αで配合されています。

■結局、効くのか効かないのか??

結論からいうと、成分から察するに、効くはずです!

というか、処方薬よりも万能かもしれません。。
ちゃんと調べてみて、患者さんにおすすめしたい、、と思ってしまったくらい。

というわけで、
更年期症状かも、と思ってらっしゃる方、
受診するほどでも、、という感じでしたら、まずは『命の母A』を試してみてください!

そして、
生理不順が、、PMSが、、
とお困りの方は、『命の母ホワイト』を試してみてください!

それでも改善しなければ、ぜひ婦人科を受診しましょう。


うなぎいぬは小林製薬とは何の関係もないですが、
調べてみたらその成分に感動して、ぜひみなさまに知って頂きたいと思った次第です。

『避妊』のことをちゃんと教えようとした足立区がすばらしい件

産婦人科医として、望まぬ妊娠のために学校通えなくなってしまう中高生たちをみるたびに、なんとかして性教育を改善したいと思いながら、
『性交渉』という言葉すら使ってはいけない『学習指導要領』の壁があって難しいよな、、と悶々としているのですが、
そんなしがらみをはねのけて、しかるべき性教育を行った足立区はすばらしいです。

『高校生になればセックスをしてもよい』と思うか、
というアンケートをしたというのは、個人的にはナンセンスと思いますが、
(そんなのいつからOKなんて誰も決められないので、、)
避妊方法や緊急避妊薬についてちゃんと教えたというのは、
ほんまにすばらしい。

東京都教育委員会が、
『かえって性交を助長する可能性がある』
といちゃもんをつけているのは、全く現実を把握していないご意見で、

・そもそも現実的に、性交渉に年齢制限はつけられない
・ちゃんとした知識がないまま性交渉するから望まない妊娠がなくならない
で、
心配するのは『助長すること』ではなくて、
昔から今に至るまでなくならない『望まない妊娠』という不幸をいかになくすか、
ということなんです。

『区教委によると、アンケートでは、授業前には5割近くの生徒が「合意すれば、高校生になればセックスをしてもよい」と答えたが、授業後には半減したクラスもあったといい、「一定の成果」だとしている。』
というのは、指摘に対する単なるexcuseだと思いますが、
べつに『セックスをしてはいけない』と答えさせることが目的ではないでしょう。

性交渉は万引きと違って犯罪ではないのだから、
『してはいけない』と教えるのではなく、
・したら妊娠する可能性がある
・避妊がなぜ必要か、どう避妊するか
・いざという時に緊急避妊薬がある
ということをちゃんと教えるべきです。
あわせて命の尊さも教えられれば完璧です。

でも、教師の中で『緊急避妊薬』のことを知っているのはたった23%。
ちなみに教師でない人で『緊急避妊薬』のことを知っているのは17%。
私も医者でなかったら知らなかったかもです。

日本の性教育が長年旧態依然のままだったせいで、
日本人全体の知識が乏しいということです。
予防できる病気と同じく、望まぬ妊娠も、知識があるだけで防げるんです。
防げる不幸に人生振り回されるだなんてほんまもったいない。。

2018年3月27日火曜日

HPVワクチン問題のマスコミでの取り上げられ方が変わってきている気がする件

昨日、HPVワクチン被害者の会の国際シンポジウムなるものが開催されたらしく、
HPVワクチンの副反応で様々な症状がでたと訴える患者さんが、
海外からも集まったとのこと。

というニュースがTBS NEWSで取り上げられていて、
わざわざ海外からも、、と驚きつつも、

ニュースの内容が、被害者によりすぎず、
最後にちゃんと、学会がワクチンとの関連ないと言っていることや、
WHOは接種を推奨していることも入っていて、
嬉しい驚きでした。

しかも、このことを取り上げた他のメディアは意外と少ない

一方で、今朝の読売新聞の医療コラムには、
HPVワクチン接種必要』という記事が掲載されていて、
全体的にすごくまともな内容です。

しかも、両論併記の原則が打ち破られて、
ワクチン推奨側の話だけでまとまっています。


6月で、HPVワクチン接種推奨が差し止められてからはや5年になります。
ここ最近ずっと膠着状態でしたが、ここにきてなんとなく、
マスコミの論調も軌道修正されている感じがするのは、
気のせいではない気がします。

5年目の節目といわず、1日も早く推奨再開したらいいんですけども。


もちろん、痛みとかの症状を訴えている患者さんの救済は大事なのですが、
ワクチンとは切り離して考えていくべきだと思うのですよね。

2018年3月3日土曜日

ついに『名古屋スタディ』が論文化

HPVワクチン接種後の症状を調査した『名古屋スタディ』の論文が、Papillomavirus Researchというジャーナルにacceptされていました!
No Association between HPV Vaccine and Reported Post-Vaccination Symptoms in Japanese Young Women: Results of the Nagoya Study
https://doi.org/10.1016/j.pvr.2018.02.002

『名古屋スタディ』というのは、
HPVワクチン接種後の報告されている24症状の発生率を、非接種群と比較する、
という約3万人を対象とした大規模調査です。
疫学研究としての研究デザインも優れていて、さらに年齢調整した分析もされており、極力バイアスを排除した解析がなされています。

結果を要約すると、
『HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない』
ということ。

ワクチンの副反応に関心のある人の方が回答意欲も高いでしょうから、どちらかというと、ワクチン接種群で有意に発生率が高い、という結果に偏りがちなバイアスがかかっていると思われるのですが、はっきりとこういう結果になったのは、意外でありつつも、HPVワクチンで1人でも多くの人を子宮頸がんから守りたいと思っている産婦人科医としては、この結果に安堵しました。
結果がどちらであれ、そもそもこういった大規模疫学調査を一自治体が行っていたことがすばらしいです。名古屋市すごいです。
しかも、おそらく、『薬害なんじゃないか』というスタンスではじめた調査のはずなのですが、
にもかかわらずの結果、ということです。

■HPVワクチンの今後の展望
論文化されたことで、医者も自信をもって「諸症状とHPVワクチンとは関連性はないんです」と患者さんに説明できます。
そしてこの論文が、膠着状態に陥っている『HPVワクチン接種推奨が再開されない問題』が動くきっかけとなるとよいのですが。
2013年に副反応問題を大きく報道したマスコミが、この調査結果も、同じくらいのボリュームで報道してほしい、というか、報道するべき、です。
薬害が疑われたときに大きく報道したのは、それはそれでマスコミの大事な役割だったと思います。
でも、客観的に調査して、結果が覆ったら、それはそれで事実として報道したらいいと思うんです。以前と同じかそれ以上のボリュームで。でないと国民の不安は払拭されないでしょうから。
そしていずれは、世論が動けば、厚労省も動かざるをえなくなるんじゃないかと。。

■ HPVワクチンの件だけじゃなくて
今回の調査で、『HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない』という結果になったということは、つまり、
ワクチン接種の有無関係なく、疼痛、認知能力低下、不随意運動、歩けなくなる、脱力、などの症状がある若い女性が、結構いる、ということです。
そもそも、これまでそういう症状がある患者さんたちの診療が十分になされていなかったんだと思います。
何が原因かも分からず、有効な治療もなく苦しんでいる、若い女子、女性たちが実は結構いることが、この調査で明らかになり、そのことは見逃してはいけないと思います。
HPVワクチン問題とは別の問題として、こういう症状の人たちが適切な医療を受けられるようにならないとですね。

2018年3月2日金曜日

HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない!

HPVワクチンについて、正しい情報を多くの人に、
特に、娘さんのいるご両親に届けるにはどうしたらよいかと、
日々悶々と考えている産婦人科医のうなぎいぬです。

そんな中、嬉しい情報が。

HPVワクチン接種後の症状を調査した『名古屋スタディ』の論文が、Papillomavirus Researchというジャーナルにacceptされていました!

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405852117300708

『名古屋スタディ』というのは、

HPVワクチン接種後の報告されている24症状の発生率を、非接種群と比較する、

という7万人を対象とした大規模調査です。

疫学研究としての研究デザインも優れていて、さらに年齢調整した分析もされており、極力バイアスを排除した解析がなされています。

結果を要約すると、

HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない

とのこと。

ワクチンの副反応に関心のある人の方が回答意欲も高いでしょうから、どちらかというと、ワクチン接種群で有意に発生率が高い、という結果に偏りがちなバイアスがかかっていると思われるのですが、はっきりとこういう結果になったのは、意外でありつつも、HPVワクチンで1人でも多くの人を子宮頸がんから守りたいと思っている産婦人科医としては、この結果に安堵しました。

結果がどちらであれ、そもそもこういった大規模疫学調査を一自治体が行っていたことがすばらしいです。

HPVワクチンの今後の展望

論文化されたことで、医者も自信をもって「諸症状とHPVワクチンとは関連性はないんです」と患者さんに説明できます。

そしてこの論文が、膠着状態に陥っている『HPVワクチン接種推奨が再開されない問題』が動くきっかけとなるとよいのですが。

2013年に副反応問題を大きく報道したマスコミが、この調査結果も、同じくらいのボリュームで報道してほしい、というか、報道するべき、です。

薬害が疑われたときに大きく報道したのは、それはそれでマスコミの大事な役割だったと思います。
でも、客観的に調査して、結果が覆ったら、それはそれで事実として報道したらいいと思うんです。以前と同じかそれ以上のボリュームで。でないと国民の不安は払拭されないでしょうから。

そしていずれは、世論が動けば、厚労省も動かざるをえなくなるんじゃないかと。。

  HPVワクチンの件だけじゃなくて

今回の調査で、『HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない』という結果になったということは、つまり、

ワクチン接種の有無関係なく、疼痛、認知能力低下、不随意運動、歩けなくなる、脱力、などの症状がある若い女性が、結構いる、ということです。

そもそも、これまでそういう症状がある患者さんたちの診療が十分になされていなかったんだと思います。
何が原因かも分からず、有効な治療もなく苦しんでいる、若い女子、女性たちが実は結構いることが、この調査で明らかになり、そのことは見逃してはいけないと思います。

HPVワクチン問題とは別の問題として、こういう症状の人たちが適切な医療を受けられるようにならないとですね。

2018年2月13日火曜日

アフターピルはなぜOTC化されないか

望まない妊娠を減らしたいと切に願っている産婦人科医のうなぎいぬです。

アフターピルって知ってますか?

『アフターピル(緊急避妊薬)』というのは、

避妊に失敗したときに、後から飲むことで避妊することができる、

という、『レボノルゲストレル』というホルモン剤です。

セックスの後、はやく飲むほど避妊率は高いですが、
一応、72時間以内なら妊娠阻止率 84%と言われています。
『妊娠阻止率』というのは、生理周期から妊娠してしまう可能性が高い場合に、
緊急避妊薬によって妊娠を回避できた確率、という意味です。
なので、全体の避妊率はもっと高く、98%以上です。

でも排卵は容易にずれうるので、安全日だから大丈夫、という過信は禁物です。

アフターピル内服で避妊できるのは、
どういうメカニズムかというと、

  排卵前の場合には、排卵を抑制する。
  排卵後だったとしても、着床を阻害する

という二段構えで、妊娠を阻止します。

産婦人科医的には、すばらしい薬です。
もちろん、『最後の砦』としてですが。

アフターピルがあるから避妊しなくてよい、なんて発想はナンセンス、
全くそんなことはありません!!
妊娠する気がないのであれば、避妊するのが大前提です。

それでも、うっかり避妊に失敗してしまうことはあるでしょうし、

さらに、レイプなど性的暴行の被害にあった場合などには、
本当に女性の味方の薬です。

ただ、日本では、産婦人科を受診しないと処方してもらえません。
海外では、すでにOTCover the counter)化されていて、
薬局で市販されている薬です。
OTC化、というのは、薬局で市販できるようにすること、という意味です。

薬の性質上、だれでもいつでも購入できることで効果が最大限に発揮されるのですが、
受診しないといけない、というだけで、
時間的にも精神的にも足かせとなってしまいます。

さらに土日で病院が休みだったりしたらますます遅くなります。

論理的に考えれば、OTC化するべきでしょ、という発想になるので、
すでに、厚労省で『OTC化の可否』を検討する会議が開かれています。

20177月に第二回が開かれたのですが、
反対意見多数で、否ありきの姿勢に、
産婦人科医、薬剤師から反発があり、
パブリックコメントが募集されました。

それをうけて、201711月に第三回会議が開かれました。

パブコメの結果は、なんと、
 賛成 320
 反対 28
でした。

にもかかわらず、結論は『否』のままでした。

なんのためのパブコメ募集なんでしょうか。

第二回の時の、『否』の理由としては、

  医師に寄る性教育の機会が失われる
  薬剤師が説明できるとは思えない

などですが、

実際のところは、
クリニックの売り上げがその分減ってしまうから、
というのが本音のようです。

今は、アフターピルは自費処方なので、院内処方にできます。
自費で院内処方なら、価格設定は自由です。
クリニック的にはそれなりの収益になるのでしょう。

性教育の機会が減るとか、
アフターピルが普及すると避妊しなくなるのでは、

とか危惧する前に、
いま現状、なにが目的か、なにが最優先事項か、です。

なぜアフターピルをOTC化した方がいいかというと、

防げる望まない妊娠は、防いだ方がいいから。

なぜなら、

望まない妊娠が減る            →人工妊娠中絶が減る
                                       →(産んだ場合の)虐待が減る

からです。

新生児の虐待の約70%は望まない妊娠です。

もちろん、自分で育てずに、養子縁組という方法もありますが、
妊娠出産が女性の人生に与える影響は大き過ぎます。

10代なら、学業に影響しますし、
社会人なら、仕事にも影響します。

そして、養子縁組はまだまだ日本では浸透していませんので、
養子にだすとなると、人目をとても気にしてしまうでしょう。

人工妊娠中絶すればいいじゃないか、
というドライな意見もあるかもしれませんが、
中絶手術自体もリスクを伴いますし、
倫理的にも費用的にも重くのしかかります。

そもそも、妊娠に気づくのが遅ければ、中絶することすらできなくなります。


繰り返しますが、妊娠を希望しないなら避妊するのが大前提です。
感染症予防のためにも、コンドームを使用しましょう。

でも、それでも、うっかり中だししてしまったら、
その場合には、アフターピルがありますよ!

という話です。

というわけで、アフターピルは即刻OTC化するべきなのですが、

一方で、アフターピルの認知度がまだまだ低いのも問題です。

『緊急避妊薬』を知っているのはたった20%!!
K. Inaba et. al, Adolescentology 2017 Vol.35 321-330
しかも、知っていても、その効果を信用していない人もいるでしょう。

先日、それなりの有識者から、『アフターピルって効くの?』と聞かれ、
全然信頼されていないことに衝撃を受けました。


アフターピルの効果自体も、もっともっと啓発していかないといけませんね。

男性用ピル!?

精子の運動率を可逆的に抑制する成分の、マウスでの研究結果が発表されました。 Inhibition of sperm motility in male macaques with EP055, a potential non-hormonal male contrace...