2018年3月3日土曜日

ついに『名古屋スタディ』が論文化

HPVワクチン接種後の症状を調査した『名古屋スタディ』の論文が、Papillomavirus Researchというジャーナルにacceptされていました!
No Association between HPV Vaccine and Reported Post-Vaccination Symptoms in Japanese Young Women: Results of the Nagoya Study
https://doi.org/10.1016/j.pvr.2018.02.002

『名古屋スタディ』というのは、
HPVワクチン接種後の報告されている24症状の発生率を、非接種群と比較する、
という約3万人を対象とした大規模調査です。
疫学研究としての研究デザインも優れていて、さらに年齢調整した分析もされており、極力バイアスを排除した解析がなされています。

結果を要約すると、
『HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない』
ということ。

ワクチンの副反応に関心のある人の方が回答意欲も高いでしょうから、どちらかというと、ワクチン接種群で有意に発生率が高い、という結果に偏りがちなバイアスがかかっていると思われるのですが、はっきりとこういう結果になったのは、意外でありつつも、HPVワクチンで1人でも多くの人を子宮頸がんから守りたいと思っている産婦人科医としては、この結果に安堵しました。
結果がどちらであれ、そもそもこういった大規模疫学調査を一自治体が行っていたことがすばらしいです。名古屋市すごいです。
しかも、おそらく、『薬害なんじゃないか』というスタンスではじめた調査のはずなのですが、
にもかかわらずの結果、ということです。

■HPVワクチンの今後の展望
論文化されたことで、医者も自信をもって「諸症状とHPVワクチンとは関連性はないんです」と患者さんに説明できます。
そしてこの論文が、膠着状態に陥っている『HPVワクチン接種推奨が再開されない問題』が動くきっかけとなるとよいのですが。
2013年に副反応問題を大きく報道したマスコミが、この調査結果も、同じくらいのボリュームで報道してほしい、というか、報道するべき、です。
薬害が疑われたときに大きく報道したのは、それはそれでマスコミの大事な役割だったと思います。
でも、客観的に調査して、結果が覆ったら、それはそれで事実として報道したらいいと思うんです。以前と同じかそれ以上のボリュームで。でないと国民の不安は払拭されないでしょうから。
そしていずれは、世論が動けば、厚労省も動かざるをえなくなるんじゃないかと。。

■ HPVワクチンの件だけじゃなくて
今回の調査で、『HPVワクチン接種と、報告されている24症状との間に関連性はない』という結果になったということは、つまり、
ワクチン接種の有無関係なく、疼痛、認知能力低下、不随意運動、歩けなくなる、脱力、などの症状がある若い女性が、結構いる、ということです。
そもそも、これまでそういう症状がある患者さんたちの診療が十分になされていなかったんだと思います。
何が原因かも分からず、有効な治療もなく苦しんでいる、若い女子、女性たちが実は結構いることが、この調査で明らかになり、そのことは見逃してはいけないと思います。
HPVワクチン問題とは別の問題として、こういう症状の人たちが適切な医療を受けられるようにならないとですね。

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