こんにちは、わりと漢方もよく処方しているうなぎいぬです。
先週、メトロに乗っていたら、
週刊新潮の吊り広告に『「漢方」の大嘘』という特集がでかでかと載っていて、
まぁ医療関係の記事が週刊誌に載るのも珍しくはないので、
あまり気にはしていませんでしたが、
『あのー、これって本当なんでしょうか、、』
とその週刊新潮を持って受診してきた患者さんがいらしたので、
ちゃんと目を通してみました。
n おおむね嘘は書かれていない
副作用の情報とかも、嘘ではないのだと思います。
ただ、書き方が週刊誌らしいというか、
大げさに誇張して書かれています。
いろんな漢方について書かれていますが、
うなぎいぬは産婦人科医なので、関係するところでいうと、
『妊婦が絶対飲んではいけない薬がある』
といって、
女性によく処方される『加味逍遥散の成分の牡丹皮(ぼたんぴ)には流早産を促す危険性があり、まさに“女性の敵”と書かれていますが、
妊婦が飲んではいけない薬なんて、あるに決まっているじゃないですか。
それは漢方だけではないです。
気をつけるべき薬なんてあって当然です。
だから、我々だって、妊婦さんには加味逍遥散は処方しません。
でも、妊婦さんに漢方薬はよく処方します。
妊娠中っていろんな症状がでうるので、
安全に使える漢方薬をちゃんと選べば、
妊婦さんの味方になりえます。
n 一部根拠があいまい
生薬の中の、黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)などには、国際がん研究機関が発がん性物質グループ2Bに分類した“ヒドラスチス根”の主成分のベルベリンが含まれている、だから危険だ、
と書いてあるのですが、これは論理の飛躍がありそうです。
ベルベリン製剤として『フェロベリン配合錠』という下痢の薬がありますが、この薬の毒性試験でも発がん性は示されていません。
(漢方医薬学雑誌 2016 Vol.24 No.3)
ヒドラスチス根の成分はベルベリンだけではないでしょうし、
確かに、黄連、黄柏には、
間質性肺炎、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症の副作用との関連は示されていますが、
発がん性はこじつけなような気がします。
n ツムラだけが名指しで批判されている
漢方薬をだしているのはツムラだけではありません。
クラシエとか他にも漢方をだしている製薬会社はあります。
確かにツムラが漢方薬の国内シェアNo.1で8割を占めていますが、
なぜこの記事でツムラだけが名指しで批判されているのでしょうか?
記事の監修をされているのが、
筑波大学の内藤裕史名誉教授という先生で、
ツムラの営業さんの話では、
以前から漢方やサプリとかに批判的な意見の先生なのだそうです。
その先生がツムラに悪印象があるのかなんなのか分かりませんが、
ツムラの漢方が悪いわけではないのに、
ツムラだけ名指しで批判されていて、ややかわいそうです。
おそらく、もともと漢方がお好きではないので、
日本で漢方を普及させるのに成功したツムラが気に食わないのではないかなぁと思います。
n 副作用があるのは漢方薬だけではない
どんな薬にも副作用はおこりうるのです。
「薬剤性肝障害」とか「薬疹」とか、軽症から重症までいろいろですが、
どんな薬にも起こりえる話です。
この記事で、小柴胡湯が『間質性肺炎で41人の命を奪った』と書かれていますが、それはそれで恐らく確かで、
確かに他の薬よりも重大な副作用の確率が明らかに高い薬もあります。
でも、その小柴胡湯の添付文書には、
赤字で『警告』としてその情報が載っています。
別に、野放しにされているわけではないのです。
ちなみに、ツムラの営業さんが、
お騒がせしてすみません、、、
と早速いらしたので、色々話を聞いてみました。
まだツムラとして公にはリアクションをとっていませんが、
今回の記事は、『次号に続く』となっているので、
次号までみた上で、会社としての対応を考えるそうです。
記事の中にでてくる、かつての“ツムラのお家騒動”は確かにあったそうで、
でも今はもう社長は一族で継承しているわけではないので、
ちゃんと経営されているそうです。
かつては、『小柴胡湯』一剤で300億以上の売り上げがあったそうですが、
やはり間質性肺炎の問題もあって、今では殆ど使われていないそうです。
なので、まとめると、
ü 漢方だから危険!というわけではない!
ü 漢方もうまく使えばとても有用!
ü 心配なら主治医の先生に聞いてみましょう
といったところですね。
漢方薬も活用させて頂いているうなぎいぬとしては、
この一件で漢方に不安感を抱く人が増えないといいなぁと望みます。
0 件のコメント:
コメントを投稿